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不動産公開 2026-09-30 ・ 更新 2026-09-30

表面利回り8%と実質利回りの違いは?ワンルームで手残りを計算

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表面利回りと実質利回り

「表面利回り8%」。1,800万円のワンルームに家賃12万円、年144万円が入るという意味です。ここから空室、管理費、修繕積立金、税、保険を引き、買うときの諸費用まで元手に入れると、実質利回りは約5.3%でした。ローンを返したあとの手残りは年約29万円。家賃1割減・空室2か月・修繕積立金2倍・金利上昇が重なると、毎年8万円の持ち出しに変わります。数字は全部、前提を書いた仮の例です。

書いている私は、相場のロジックを100以上検証してきたシステムエンジニアです。不動産の専門家ではありません。数字は公的機関の原文を開いて確かめたものと、前提を書いた自分の計算だけです。特定の物件や会社はすすめません。

先に1分チェック

  1. 見ている利回りは「表面」ですか、「実質」ですか。資料に書いていなければ、たいてい表面です
  2. その家賃は、いま入っている家賃ですか、「想定」ですか。想定家賃なら、まだ誰も払っていない数字です
  3. 勧めてくれた人は、あなたが買うと何で収入を得ますか。

1つでも分からなければ、そこが先です。

表面利回りは「家賃÷価格」。引かれるものが1つも入っていない

表面利回りの式は、1年分の家賃を物件の価格で割るだけで、この例なら12万円×12か月=144万円を1,800万円で割って8.0%になります。

空室も管理費も税金も入っていません。持ち主が払うお金を全部ゼロと置いた数字なので、見た目がいい。

手元に残る力を見るには、「家賃−空室分−経費」で割ります。これを NOI(ローンを返す前に残るお金)と呼び、この記事では NOI を元手で割ったものを実質利回りとします。

仮のワンルームの前提。公的な数字と仮の値を分けて置く

価格は、国民生活センターの2019年の資料で20歳代の平均契約購入金額が2,000万円を超えていたので、少し下に置きました。

項目この記事の値根拠
価格1,800万円仮の値
家賃月12万円(年144万円)仮の値(表面8%になるように置いた)
買うときの諸費用100万円仮の値
管理費月8,000円仮の値(全国平均は月11,503円。下で差し替える)
修繕積立金月7,000円仮の値(全国平均は月13,054円。下で差し替える)
賃貸管理の委託料入った家賃の5%仮の値
固定資産税・都市計画税年6万円仮の値(固定資産税の標準税率1.4%は総務省。税額は評価額で決まり、価格からは出せない)
火災保険など年1万円仮の値
空室年1か月仮の値
ローン1,800万円・35年・元利均等・金利2.0%仮の値(諸費用100万円は手持ちから)

管理費・修繕積立金の全国平均は国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(駐車場使用料等からの充当額を除く、月・1戸あたりの平均)。固定資産税の標準税率は総務省「固定資産税」のページ。どちらも2026年9月30日確認。ほかは筆者が置いた仮の値

段階的に引いていく:8.0%が5.3%に、手残りは年約29万円

引き算です。

段階1年の金額価格で割ると
家賃(満室)144万円8.0%(表面利回り)
空室1か月分を引く−12万円
管理費を引く−9.6万円
修繕積立金を引く−8.4万円
賃貸管理の委託料を引く−6.6万円
固定資産税・都市計画税、保険を引く−7万円
残り(NOI)100.4万円約5.6%
諸費用100万円も元手に入れる100.4万円÷1,900万円約5.3%(実質利回り)
ローン返済を引く−71.6万円
手残り(税引き前)約28.8万円月あたり約2.4万円

筆者の計算。ローン返済は1,800万円・35年・元利均等・金利2.0%で月59,627円。所得税・住民税、減価償却、退去時の原状回復や設備の交換は入れていない

家賃の約3割がローンの前に消え、残るのは家賃の約2割です。公平に書くと、1年目の返済のうち約35.9万円は元本で、借金が減った分です。ただ、それがお金として戻るのは、借金の残りより高く売れたときだけです。

公的な数字と突き合わせる:管理費と修繕積立金は平均で月2.4万円

国土交通省のマンション総合調査(令和5年度)では、1戸あたり月の平均が管理費11,503円、修繕積立金13,054円でした。家族向けも含めた全国の平均なので、ワンルームはたいていこれより安い。それでも平均をそのまま当てると、実質利回りは約4.7%、手残りは年約17万円です。

もっと効くのは、修繕積立金があとから上がることです。同じ調査で、途中で段階的に上げる方式が47.1%、計画より積立額が足りないマンションが36.6%ありました。

空室はどうか。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では空き家率が13.8%で過去最高でしたが、これは全住宅に占める割合で、賃貸の空室率ではありません。参考分析では、民間の賃貸用などの空き家で最も多いのは29㎡以下の小さい部屋(推計81万8千戸)でした。

出典:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」概要編・現状編、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」基本集計の概要と参考分析(2026年9月30日確認)。空き家の床面積別は、一定の仮定を置いた推計と注記されている

前提を動かすと:空室と金利で、手残りはこれだけ動く

手残りを大きく動かすのは、空室と金利です。ほかの前提はそのままにして、2つだけ動かしました。

空室(年)金利1.5%金利2.0%金利2.5%金利3.0%
0か月約45.7万円約40.2万円約34.6万円約28.7万円
1か月約34.3万円約28.8万円約23.2万円約17.3万円
2か月約22.9万円約17.4万円約11.8万円約5.9万円
3か月約11.5万円約6.0万円約0.4万円約−5.5万円

筆者の計算。1年目の税引き前の手残り(NOI−ローン返済)。家賃月12万円・管理費月8,000円・修繕積立金月7,000円・委託料5%・固定資産税等年6万円・保険年1万円は固定。ローンは1,800万円・35年・元利均等で、金利がずっと同じと置いた

空室が1か月増えると、手残りは約11.4万円減ります。金利が0.5%上がると、約5.7万円。空室のほうが効きます。

次に、悪い条件を重ねてみます。家賃が1割下がって月10.8万円、空室が年2か月、修繕積立金が倍の月14,000円、金利が2.5%。この4つが同時に起きると NOI は約69.2万円、実質利回りは約3.6%まで下がり、ローンを返したあとは年約8万円の持ち出し(月約6,700円)です。

「8%」という1つの数字には、この先の変化が1つも入っていません。

質問3で読む:勧める人は、何で収入を得ている?

このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。今回は3つ目の「勧める人は何で収入を得ている?」です。

業者が売主なら収入は販売価格と仕入れ値の差、仲介なら国が上限を決めた仲介手数料で、どちらも売れた時点で入ります。その後の空室や家賃の下落は、持ち主が引き受けます。家賃保証(サブリース)なら、管理会社の収入は入居者の家賃との差や手数料です。国民生活センターは、保証に期限がある、賃料が下げられるといったリスクを挙げています。

業者が悪いという話ではありません。収入が「売ること」から来るなら、説明は良い面に寄りやすい。だから質問2の「自分が損する場合は書いてある?」を、こちらから当てにいきます。

勧誘の落とし穴:「節税になる」「老後資金になる」と言われたら

国民生活センターは2019年3月、20歳代の投資用マンションの相談が2013年度の160件から2018年度は405件に増えたと注意を呼びかけました。相談には「家賃収入で老後資金になる」「節税になる」と利益を強調し、リスクの説明が足りない例や、深夜まで帰してもらえなかった例が並びます。

「年金代わり」と言われたら、まず老後に毎月いくら足りなくなりそうかを自分で数えます。老後2,000万円の前提を計算し直した記事のとおり、足りない額は前提しだいで数百万円単位で動きます。「節税」なら、どの税がどう減るのかを先に聞く。相続の話なら、相続税がそもそもかかる家かどうかからです。

国土交通省は、宅地建物取引業法で禁じられた勧誘として、確実でない利益を言い切る、威圧する、社名や目的を告げずに勧誘する、断った相手に勧誘を続ける、迷惑な時間に電話や訪問をする、などを挙げています。業者が売主で事務所など以外で契約した場合は、8日間のクーリング・オフ(書面で契約をやめられる仕組み)ができることがあります。困ったら消費者ホットライン188へ。

もう1つ。住宅金融支援機構は、【フラット35】は投資用の物件に使えず、分かれば残りを一括で返すよう求めるとしています。「自分で住むことにして借りればいい」は危険な合図です。

出典:国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」(2019年3月28日)、国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください」、住宅金融支援機構「【フラット35】の不適正利用に巻き込まれないために」(いずれも2026年9月30日確認)

この計算が合わない人・損しやすい場合

私ならこうする

私なら、表面利回りを見たら、家賃から空室1〜2か月分と管理費・修繕積立金・税・保険を引いて価格で割る、という割り算を自分でやり直します。電卓で5分です。

次に、悪い条件を全部入れた年の手残りを見て、マイナスならその持ち出しを何年払えるかを考えます。最後に「あなたは何で収入を得ますか」と聞く。答えない相手とは話を進めません。

この記事でわからないこと

次にやることは1つ。手元の資料の利回りが「表面」か「実質」か、家賃が「現在」か「想定」かを確かめてください。

あなたが見た利回りの数字は、空室と修繕積立金を引いたあとでも、ローンの返済を上回りそうですか?

国土交通省・総務省・国民生活センター・住宅金融支援機構の資料をもとに、利回りの計算の仕組みを説明したものです(2026年9月30日確認)。特定の物件・業者・不動産投資をすすめるものでも、個別の投資・税務の助言でもありません。計算例は仮の前提を置いたもので、将来の収益を示すものではありません。

よくある質問

表面利回りと実質利回りの違いは何ですか

表面利回りは1年分の家賃を価格で割っただけの数字で、空室や経費が入っていません。実質利回りは、家賃から空室分と管理費・修繕積立金・税・保険などを引いた額を、諸費用を含めた元手で割ったものです。この記事の仮の例では、表面8.0%が実質約5.3%になりました(筆者の計算)。

ワンルームの管理費と修繕積立金はいくらくらいですか

国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1戸あたり月の平均が管理費11,503円、修繕積立金13,054円でした(駐車場使用料等からの充当額を除く)。家族向けの部屋も含めた全国の平均で、ワンルームだけの平均ではありません。修繕積立金は段階的に上げる方式が47.1%でした(2026年9月30日確認)。

投資用マンションの勧誘を断ったのに、また電話が来ます

国土交通省は、契約しない意思を示した相手に勧誘を続けることや、迷惑な時間の電話・訪問を宅地建物取引業法で禁止された行為として案内しています。困ったときは消費者ホットライン188(最寄りの消費生活センター)に相談できます。