表面利回り8%と実質利回りの違いは?ワンルームで手残りを計算
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「表面利回り8%」。1,800万円のワンルームに家賃12万円、年144万円が入るという意味です。ここから空室、管理費、修繕積立金、税、保険を引き、買うときの諸費用まで元手に入れると、実質利回りは約5.3%でした。ローンを返したあとの手残りは年約29万円。家賃1割減・空室2か月・修繕積立金2倍・金利上昇が重なると、毎年8万円の持ち出しに変わります。数字は全部、前提を書いた仮の例です。
先に1分チェック
- 見ている利回りは「表面」ですか、「実質」ですか。資料に書いていなければ、たいてい表面です
- その家賃は、いま入っている家賃ですか、「想定」ですか。想定家賃なら、まだ誰も払っていない数字です
- 勧めてくれた人は、あなたが買うと何で収入を得ますか。
1つでも分からなければ、そこが先です。
表面利回りは「家賃÷価格」。引かれるものが1つも入っていない
表面利回りの式は、1年分の家賃を物件の価格で割るだけで、この例なら12万円×12か月=144万円を1,800万円で割って8.0%になります。
空室も管理費も税金も入っていません。持ち主が払うお金を全部ゼロと置いた数字なので、見た目がいい。
手元に残る力を見るには、「家賃−空室分−経費」で割ります。これを NOI(ローンを返す前に残るお金)と呼び、この記事では NOI を元手で割ったものを実質利回りとします。
仮のワンルームの前提。公的な数字と仮の値を分けて置く
価格は、国民生活センターの2019年の資料で20歳代の平均契約購入金額が2,000万円を超えていたので、少し下に置きました。
| 項目 | この記事の値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 価格 | 1,800万円 | 仮の値 |
| 家賃 | 月12万円(年144万円) | 仮の値(表面8%になるように置いた) |
| 買うときの諸費用 | 100万円 | 仮の値 |
| 管理費 | 月8,000円 | 仮の値(全国平均は月11,503円。下で差し替える) |
| 修繕積立金 | 月7,000円 | 仮の値(全国平均は月13,054円。下で差し替える) |
| 賃貸管理の委託料 | 入った家賃の5% | 仮の値 |
| 固定資産税・都市計画税 | 年6万円 | 仮の値(固定資産税の標準税率1.4%は総務省。税額は評価額で決まり、価格からは出せない) |
| 火災保険など | 年1万円 | 仮の値 |
| 空室 | 年1か月 | 仮の値 |
| ローン | 1,800万円・35年・元利均等・金利2.0% | 仮の値(諸費用100万円は手持ちから) |
段階的に引いていく:8.0%が5.3%に、手残りは年約29万円
引き算です。
| 段階 | 1年の金額 | 価格で割ると |
|---|---|---|
| 家賃(満室) | 144万円 | 8.0%(表面利回り) |
| 空室1か月分を引く | −12万円 | |
| 管理費を引く | −9.6万円 | |
| 修繕積立金を引く | −8.4万円 | |
| 賃貸管理の委託料を引く | −6.6万円 | |
| 固定資産税・都市計画税、保険を引く | −7万円 | |
| 残り(NOI) | 100.4万円 | 約5.6% |
| 諸費用100万円も元手に入れる | 100.4万円÷1,900万円 | 約5.3%(実質利回り) |
| ローン返済を引く | −71.6万円 | |
| 手残り(税引き前) | 約28.8万円 | 月あたり約2.4万円 |
家賃の約3割がローンの前に消え、残るのは家賃の約2割です。公平に書くと、1年目の返済のうち約35.9万円は元本で、借金が減った分です。ただ、それがお金として戻るのは、借金の残りより高く売れたときだけです。
公的な数字と突き合わせる:管理費と修繕積立金は平均で月2.4万円
国土交通省のマンション総合調査(令和5年度)では、1戸あたり月の平均が管理費11,503円、修繕積立金13,054円でした。家族向けも含めた全国の平均なので、ワンルームはたいていこれより安い。それでも平均をそのまま当てると、実質利回りは約4.7%、手残りは年約17万円です。
もっと効くのは、修繕積立金があとから上がることです。同じ調査で、途中で段階的に上げる方式が47.1%、計画より積立額が足りないマンションが36.6%ありました。
空室はどうか。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では空き家率が13.8%で過去最高でしたが、これは全住宅に占める割合で、賃貸の空室率ではありません。参考分析では、民間の賃貸用などの空き家で最も多いのは29㎡以下の小さい部屋(推計81万8千戸)でした。
前提を動かすと:空室と金利で、手残りはこれだけ動く
手残りを大きく動かすのは、空室と金利です。ほかの前提はそのままにして、2つだけ動かしました。
| 空室(年) | 金利1.5% | 金利2.0% | 金利2.5% | 金利3.0% |
|---|---|---|---|---|
| 0か月 | 約45.7万円 | 約40.2万円 | 約34.6万円 | 約28.7万円 |
| 1か月 | 約34.3万円 | 約28.8万円 | 約23.2万円 | 約17.3万円 |
| 2か月 | 約22.9万円 | 約17.4万円 | 約11.8万円 | 約5.9万円 |
| 3か月 | 約11.5万円 | 約6.0万円 | 約0.4万円 | 約−5.5万円 |
空室が1か月増えると、手残りは約11.4万円減ります。金利が0.5%上がると、約5.7万円。空室のほうが効きます。
次に、悪い条件を重ねてみます。家賃が1割下がって月10.8万円、空室が年2か月、修繕積立金が倍の月14,000円、金利が2.5%。この4つが同時に起きると NOI は約69.2万円、実質利回りは約3.6%まで下がり、ローンを返したあとは年約8万円の持ち出し(月約6,700円)です。
「8%」という1つの数字には、この先の変化が1つも入っていません。
質問3で読む:勧める人は、何で収入を得ている?
このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。今回は3つ目の「勧める人は何で収入を得ている?」です。
業者が売主なら収入は販売価格と仕入れ値の差、仲介なら国が上限を決めた仲介手数料で、どちらも売れた時点で入ります。その後の空室や家賃の下落は、持ち主が引き受けます。家賃保証(サブリース)なら、管理会社の収入は入居者の家賃との差や手数料です。国民生活センターは、保証に期限がある、賃料が下げられるといったリスクを挙げています。
業者が悪いという話ではありません。収入が「売ること」から来るなら、説明は良い面に寄りやすい。だから質問2の「自分が損する場合は書いてある?」を、こちらから当てにいきます。
勧誘の落とし穴:「節税になる」「老後資金になる」と言われたら
国民生活センターは2019年3月、20歳代の投資用マンションの相談が2013年度の160件から2018年度は405件に増えたと注意を呼びかけました。相談には「家賃収入で老後資金になる」「節税になる」と利益を強調し、リスクの説明が足りない例や、深夜まで帰してもらえなかった例が並びます。
「年金代わり」と言われたら、まず老後に毎月いくら足りなくなりそうかを自分で数えます。老後2,000万円の前提を計算し直した記事のとおり、足りない額は前提しだいで数百万円単位で動きます。「節税」なら、どの税がどう減るのかを先に聞く。相続の話なら、相続税がそもそもかかる家かどうかからです。
国土交通省は、宅地建物取引業法で禁じられた勧誘として、確実でない利益を言い切る、威圧する、社名や目的を告げずに勧誘する、断った相手に勧誘を続ける、迷惑な時間に電話や訪問をする、などを挙げています。業者が売主で事務所など以外で契約した場合は、8日間のクーリング・オフ(書面で契約をやめられる仕組み)ができることがあります。困ったら消費者ホットライン188へ。
もう1つ。住宅金融支援機構は、【フラット35】は投資用の物件に使えず、分かれば残りを一括で返すよう求めるとしています。「自分で住むことにして借りればいい」は危険な合図です。
この計算が合わない人・損しやすい場合
- 損しやすい:手残りが月数万円で、ほかに貯金がない人。空室や故障を給料で埋めることになります
- 損しやすい:家賃が「想定」で、まだ入居者がいない部屋
- 合わない:現金で買う人。手残りの表はローンが前提です
私ならこうする
私なら、表面利回りを見たら、家賃から空室1〜2か月分と管理費・修繕積立金・税・保険を引いて価格で割る、という割り算を自分でやり直します。電卓で5分です。
次に、悪い条件を全部入れた年の手残りを見て、マイナスならその持ち出しを何年払えるかを考えます。最後に「あなたは何で収入を得ますか」と聞く。答えない相手とは話を進めません。
この記事でわからないこと
- 所得税・住民税への影響。減価償却などで個別に変わるので、税額は税理士に確かめてください
- 売るときの値段と、原状回復・設備交換・募集の費用。入れると手残りはさらに減ります
- ワンルームだけの管理費・修繕積立金・空室率の公的な平均と、投資用ローンの実際の金利。今回は確かめられず、仮の値です
次にやることは1つ。手元の資料の利回りが「表面」か「実質」か、家賃が「現在」か「想定」かを確かめてください。
あなたが見た利回りの数字は、空室と修繕積立金を引いたあとでも、ローンの返済を上回りそうですか?
よくある質問
表面利回りと実質利回りの違いは何ですか
表面利回りは1年分の家賃を価格で割っただけの数字で、空室や経費が入っていません。実質利回りは、家賃から空室分と管理費・修繕積立金・税・保険などを引いた額を、諸費用を含めた元手で割ったものです。この記事の仮の例では、表面8.0%が実質約5.3%になりました(筆者の計算)。
ワンルームの管理費と修繕積立金はいくらくらいですか
国土交通省の令和5年度マンション総合調査では、1戸あたり月の平均が管理費11,503円、修繕積立金13,054円でした(駐車場使用料等からの充当額を除く)。家族向けの部屋も含めた全国の平均で、ワンルームだけの平均ではありません。修繕積立金は段階的に上げる方式が47.1%でした(2026年9月30日確認)。
投資用マンションの勧誘を断ったのに、また電話が来ます
国土交通省は、契約しない意思を示した相手に勧誘を続けることや、迷惑な時間の電話・訪問を宅地建物取引業法で禁止された行為として案内しています。困ったときは消費者ホットライン188(最寄りの消費生活センター)に相談できます。