相続税はうちもかかる?基礎控除を仮の家族で計算してみた
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「相続税はお金持ちの話」とよく言われます。国税庁の集計を開くと、2024年に亡くなった約160万人のうち、相続税がかかったのは10.4%、およそ10人に1人でした。かかるかどうかは財産の多さそのものより、「基礎控除」という非課税の枠を超えるかで決まります。妻と子2人の仮の家族で計算すると、もう1つ見落としやすい点が出てきました。1回目の相続で全部を妻が受け取ると税は0円。ところが、2回目の相続で子どもに180万円の税がかかりました。
先に1分チェック
- 法定相続人は何人ですか。配偶者と子どもの数を足します。子がいなければ親、親もいなければ兄弟姉妹です
- 家・土地・預金・株・保険金を、ざっくり足すといくらですか。万円単位の目安で足ります
- 2で出した額は、「3,000万円+600万円×1の人数」を超えますか。超えなければ、多くの場合は相続税の心配はいりません
3で超えなかった人は、ここで読み終えても大丈夫です。3で超えた人、または超えるかどうか微妙な人は、このまま下の計算まで読んでください。
基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
相続税は、財産の総額から基礎控除を引いた残りにだけかかります。国税庁のタックスアンサーでは、基礎控除はこう決まっています。
| 法定相続人 | 基礎控除 |
|---|---|
| 1人(子1人など) | 3,600万円 |
| 2人(配偶者と子1人など) | 4,200万円 |
| 3人(配偶者と子2人など) | 4,800万円 |
| 4人(配偶者と子3人など) | 5,400万円 |
数え方には、うっかり間違えやすい決まりが2つあります。相続を放棄した人も、人数には入れます。養子は、実子がいれば1人まで、いなければ2人までしか数えません。
死亡保険金にも別の非課税枠があり、「500万円×法定相続人の数」までは相続税がかかりません(No.4102)。3人なら1,500万円です。
数字の出典を見ると「10人に1人」
このブログでは、うまい話にも怖い話にも3つの質問を当てています。1つ目は「その数字の出典は?」です。
「相続税は他人事」も「相続税は誰でもかかる」も、国税庁の申告の集計で確かめられます。
| 2024年分(令和6年分) | 人数・金額 |
|---|---|
| 亡くなった人 | 1,605,378人 |
| 相続税がかかった人(税額のある申告) | 166,730人(10.4%) |
| 申告はしたが税額が0だった人 | 39,755人 |
| かかった人1人あたりの課税価格 | 1億4,025万円 |
| かかった人1人あたりの税額 | 1,946万円 |
目を引くのは3行目。税額が0円でも申告した人が、約4万人いました。理由は下の計算で見えてきます。
相続された財産の中身は、現金・預貯金が約35%、土地が約30%、有価証券が約18%でした(同じ資料の金額から計算)。家や土地がなくても、預金と株で基礎控除を超えることはあります。
仮の家族で計算:妻と子2人、財産6,000万円
夫が亡くなり、妻と子2人が相続する仮の家族です。財産は自宅2,000万円、預金3,000万円、株1,000万円の計6,000万円とします。
- 前提:財産の額は変わらない、妻には自分の財産がない、死亡保険金はない、自宅の土地の特例(後で説明)は使わない
国税庁の手順どおりに進めます。5段です。
- 基礎控除を引く:6,000万円-4,800万円=1,200万円(課税遺産総額)
- 法定相続分で分けたことにする:妻2分の1で600万円、子は4分の1ずつで300万円
- 速算表を当てる:どれも1,000万円以下なので10%。妻60万円、子30万円ずつ、合計120万円(相続税の総額)
- 実際にもらった割合で分け直す:法定相続分どおりに分けたなら、妻60万円、子30万円ずつ
- 配偶者の軽減を当てる:妻の60万円は0円に。納める税は子2人の合計60万円
配偶者は、1億6,000万円か法定相続分の多いほうまで相続税がかかりません。ここで大事なのは条件です。この軽減は、申告書を出さないと使えません。申告の期限までに遺産の分け方が決まっていない財産にも使えません。税額が0でも申告した約4万人には、こうした特例を使うために申告した人が含まれていると私は読んでいます(集計には理由までは載っていません)。
損する場合:全部を妻に渡すと、2回目で180万円
「妻に全部渡せば、配偶者の軽減で税は0円」。1回目だけを見れば、その通りです。問題は次です。
ただ、相続は2回あります。夫婦のどちらかが先に亡くなり、残った方もいつか亡くなるからです。同じ家族で、後で妻が亡くなったときの計算を並べます(前提は同じ。2回目の相続人は子2人、基礎控除は4,200万円)。
| 分け方 | 1回目(夫)で納める税 | 2回目(妻)で納める税 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 法定相続分どおり(妻3,000万円) | 60万円 | 0円(3,000万円<4,200万円) | 60万円 |
| 全部を妻に(妻6,000万円) | 0円 | 180万円 | 180万円 |
1回目を0円にした分が、2回目にまとめて来ました。差は120万円。小さくない額です。妻自身の預金があれば、2回目の差はさらに広がります。
逆の場合もあります。妻の生活費や住まいを考えれば、1回目に妻が多く受け取るのが自然な家庭も多いはずです。税が少ない分け方と、家族が暮らしやすい分け方は、一致するとは限りません。どちらを取るかは家族の事情で決まるので、この記事では答えを出しません。
自宅の土地は、特例で8割引きになることがある
自宅の土地は、「小規模宅地等の特例」で330㎡まで評価が80%下がることがあります(No.4124)。条件つきです。上の例の自宅2,000万円のうち土地の分がこれに当たれば、課税される額は大きく下がり、税が0円になる家族もあります。
ただし、この特例も申告書に書いて書類を付けることが条件です。配偶者なら条件なしで使えますが、子が使うには、住み続けるなどの条件があります。「特例があるから大丈夫」と申告を出さずにいると、特例そのものが使えません。見落としがちです。
このやり方が向かない人
- 向かない:財産が基礎控除を大きく超える人。土地の評価(路線価)や生前の贈与の持ち戻しで計算が変わるので、仮の家族の計算では足りません
- 向かない:相続人の中に、前の配偶者との子や養子がいる人。人数の数え方と分け方が複雑になります
- 自分で試せる:財産の目安と相続人の数が分かっていて、基礎控除を超えるかどうかだけ先に知りたい人
私ならこうする
私なら、まず紙1枚に「法定相続人の人数」と「財産の目安」だけを書きます。基礎控除より明らかに少なければ、そこで終わり。10分で済みます。超えそうなら、期限の10か月から逆算して、早めに税理士に相談します。配偶者の軽減も自宅の特例も、申告しないと使えないからです。
妻に多く渡すかどうかは、妻の老後の生活費で決まる面もあります。老後の必要額としてよく聞く数字の前提は老後2,000万円の根拠に、非課税で増やす枠の仕組みは新NISAの枠の復活にまとめました。
もう1つ。分け方を考えるときは、1回目の税だけでなく、2回目まで並べて見るようにします。上の表のように、1回目の0円が合計では一番高くつくことがあります。
この記事でわからないこと
- あなたの家族の税額。財産の評価、特例の条件、過去の贈与で大きく変わります。個別の計算は税理士に確かめてください
- 土地や株の評価額。この記事では、財産の額を決め打ちしています
- 税額0円で申告した約4万人が、どの特例を使ったか。国税庁の集計には載っていません
- 内容は令和8年4月1日現在の法令です。相続が起きた時点の法令と、国税庁の最新の案内を確かめてください
次にやることを1つ挙げるなら、家族の中で法定相続人が何人になるかを数えてみてください。それだけで、基礎控除がいくらかは決まります。
あなたの家では、法定相続人は何人になりますか?
よくある質問
相続税の基礎控除はいくらですか
3,000万円+600万円×法定相続人の数です(国税庁 No.4152、令和8年4月1日現在法令等)。配偶者と子2人なら4,800万円、子1人だけなら3,600万円です。相続を放棄した人も人数に入れ、養子は実子がいれば1人、いなければ2人まで数えます。
相続税がかかる人はどのくらいいますか
国税庁の集計では、2024年に亡くなった1,605,378人のうち、税額のある申告があったのは166,730人で、課税割合は10.4%でした。ほかに、申告はしたが税額が0だった人が39,755人いました。
配偶者が全部相続すれば相続税はかかりませんか
配偶者は1億6,000万円か法定相続分の多いほうまで相続税がかかりませんが、申告書を出すことが条件です。また、次に配偶者が亡くなったときの相続(2回目)で子の税が増えることがあります。仮の家族の計算では、1回目0円・2回目180万円でした。