
ふるさと納税の上限計算はなぜずれる?超えたら損はいくらか
ふるさと納税の上限は、住民税の所得割の2割で決まります。総務省の目安は給与収入500万円・独身で6.1万円。iDeCoや医療費控除で上限が下がる理由と、超えたときの負担を総務省…
このページには広告(アフィリエイトリンク)を含むことがあります。

「医療費が10万円を超えないと、税金は戻らない」。よく聞く話ですが、半分しか合っていません。ドラッグストアで買った対象の薬が年12,000円を超えれば使える、セルフメディケーション税制があります。ただし選べるのは片方だけ。申告したあとで選び直すこともできません。国税庁の式を並べると、分かれ目は「市販薬以外の医療費が88,000円を超えるかどうか」でした。超えたら医療費控除、超えなければセルフメディケーション税制です。
どちらも「所得控除」です。税金そのものが引かれるわけではありません。税金をかける前の所得から引く仕組みです。国税庁の説明(タックスアンサー1120番・1129番)を並べます。
| 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | |
|---|---|---|
| 数えるもの | 治療のための医療費(病院・歯科・処方薬・治療用の市販薬など) | 対象の市販薬の購入費だけ |
| 足切り | 10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%) | 12,000円 |
| 控除の上限 | 200万円 | 88,000円 |
| 条件 | なし | 申告する本人が、その年に健康診断や予防接種などを受けている |
総所得金額等は、給与なら給与所得控除を引いたあとの金額と考えてください。会社員の多くは200万円以上なので、足切りは10万円です。
見落としやすい点があります。風邪薬のような治療用の市販薬は、もともと医療費控除にも入れられます(1122番)。つまり対象の市販薬は、どちらの計算にも入れられる。そのうえで片方を選ぶ、という作りです。
式を2つ並べて、どちらが大きいかを比べます。市販薬以外の医療費をM、対象の市販薬をSと置きます。
医療費控除のほうが大きくなる条件は、M+S−10万円>S−12,000円。Sが両側から消えて、M>88,000円が残ります。市販薬をいくら買ったかは関係がありません。病院代などの側だけで決まります。意外でした。
この線が成り立つのは、対象の市販薬が年12,000円〜10万円の範囲です。10万円を超えるとセルフメディケーション税制は88,000円で頭打ちになるので、合計(M+S)が188,000円を超えたら医療費控除、と読み替えます。
ここで、仮の人を置きます。会社員、課税される所得が300万円で所得税率10%(国税庁2260番)、総所得金額等は200万円以上。健康診断は会社で受けています。市販薬はすべて税制の対象商品で、保険金などの補てんはなしとします。
| 1年の支払い | 医療費控除 | セルフメディケーション税制 | 大きいほう |
|---|---|---|---|
| ア 病院など5万円+市販薬4万円 | 0円(合計9万円で届かず) | 控除28,000円→税 約5,700円減 | セルフメディケーション |
| イ 病院など12万円+市販薬3万円 | 控除50,000円→税 約10,100円減 | 控除18,000円→税 約3,600円減 | 医療費控除 |
| ウ 病院など8万円+市販薬10万円 | 控除80,000円→税 約16,200円減 | 控除88,000円→税 約17,800円減 | セルフメディケーション |
ウに注目してください。合計は18万円。10万円を大きく超えているのに、セルフメディケーション税制のほうが約1,600円多く減ります。病院代などが88,000円に届いていないからです。「10万円を超えたら医療費控除」と決めて申告すると、ここで取りこぼします。
金額の小ささも正直に書いておきます。イの人は医療費を15万円払って、減る税金は約1万円です。控除額がそのまま戻るわけではありません。控除額に税率を掛けた分だけ。ここを取り違えると、期待が外れます。
このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。2つ目は「自分が損する場合は書いてある?」。この2つの控除で、得の話の裏に隠れやすい点を並べます。
2つ目の高額療養費は、入院や手術があった年ほど効いてきます。窓口で払った額でなく、戻ったあとの額で88,000円の線を見るからです。最後の自己負担がいくらになるかは、医療費100万円のときの自己負担の計算で確かめられます。
5つ目の確定申告には、続きがあります。ふるさと納税でワンストップ特例を出していた人は、確定申告をすると特例が使えなくなり、寄附も申告書に書くことになります。控除が増えると寄附の上限も少し下がるので、同じ年に両方ある人はふるさと納税の上限がずれる理由も先に見ておくと安全です。
セルフメディケーション税制は、もともと期限つきの特例です。国税庁の今の説明でも、対象は「令和8年12月31日までに購入したもの」と書かれています(1132番)。2026年の年末で終わるのか。厚生労働省のページにある、改正後の法律を読みました。
分かれ目の88,000円は、2027年以後も変わらない計算になります。なお、今の対象成分はスイッチOTCが100、それ以外が42です(令和8年4月1日現在、1132番)。品目の一覧は厚生労働省が月に1回更新しているので、買った薬が対象かどうかはレシートの印で確かめるのが確実です。
私なら、年末にレシートを2つの山に分けます。対象の印がある市販薬と、それ以外の医療費。それ以外の山から保険金や高額療養費を引いて、88,000円と比べます。計算はそこまで。あとは多いほうの明細書を作るだけです。
迷う年は、申告の前に両方の控除額を紙に書きます。選び直せないからです。私なら、数百円の差のために急いで出すことはしません。
夫婦で働いている場合は、家族の分をどちらが申告するかでも結果が変わります。払った人が申告するのが決まりなので、ここは家の事情で答えが違います。税務署か税理士に聞く所です。
次にやることを1つ挙げるなら、今年のレシートと領収書から、市販薬以外の医療費だけを足してみてください。88,000円より上か下か。それで、どちらの明細書を作るかが決まります。
「10万円を超えないから関係ない」と、去年のレシートを捨てていませんでしたか?
使えません。どちらか一方を選びます。申告したあとで、更正の請求や修正申告によって選び直すこともできません(国税庁タックスアンサー No.1131)。
対象の市販薬が年12,000円〜10万円の人なら、市販薬以外の医療費(保険金などで補てんされた分を引いた額)が88,000円を超えると医療費控除、超えなければセルフメディケーション税制のほうが控除が大きくなります(総所得金額等200万円以上の場合。筆者の計算)。
終わりません。改正後の租税特別措置法第41条の17では、2027年1月1日から、スイッチOTC医薬品は期限がなくなり、それ以外の対象医薬品は2031年12月31日までとされています(厚生労働省掲載の条文を2026年10月1日に確認)。