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毎月100円の分配金が口座に入る。うれしい話に見えます。ところが、1万口を1万円で買った投資信託の値段が9,800円に下がっているとき、この100円は1円も利益ではありません。全額が、自分が払ったお金の一部が戻ってきただけの「元本払戻金」です。しかも分配のあと、投資信託の値段は100円下がります。税金がかからないのは、もうけではないからです。
最初に押さえるのは、分配金がどこから出るかです。
資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会などが合併してできた業界団体)の説明では、分配金は投資信託の財産から払われます。だから分配金が出ると、その分だけ純資産が減り、基準価額が下がる。100円払えば、基準価額は100円下がります。
ここが預金の利息と違うところです。利息は元のお金が減らずに上乗せされますが、分配金は財布の中身を右のポケットから左のポケットに移すのに近い。受け取った瞬間に資産が増えるわけではありません。
1口1円で始まった投資信託は、基準価額を1万口あたりの値段で公表しています。この記事の数字も、すべて1万口あたりで書きます。
分配金には、税金がかかる「普通分配金」と、かからない「元本払戻金(特別分配金)」があります。どちらになるかは、持っている人ごとに決まります。
基準になるのが個別元本、つまり税金の計算に使う、その人が買ったときの値段です。販売手数料は入りません。資産運用業協会の用語集では、分け方はこう書かれています。
日本証券業協会の資料には、もう1つの場合が図で載っています。分配の前から基準価額が個別元本以下なら、分配金の全部が元本払戻金です。
同じ日に同じ100円を受け取っても、高い値段で買った人には払い戻し、安く買った人には利益。そういうことが起きます。同じ100円でもです。
仮の人で数字にします。Cさんは、ある投資信託を個別元本10,000円(1万口あたり)で買いました。決算の日、分配前の基準価額は9,800円。そこで100円の分配が出ました。
比べるために、分配前の基準価額だけを変えた2つの場合も並べます。
| 分配前の基準価額 | 9,800円(Cさん) | 10,050円 | 10,300円 |
|---|---|---|---|
| 分配後の基準価額 | 9,700円 | 9,950円 | 10,200円 |
| 普通分配金(課税) | 0円 | 50円 | 100円 |
| 元本払戻金(非課税) | 100円 | 50円 | 0円 |
| 分配後の個別元本 | 9,900円 | 9,950円 | 10,000円 |
Cさんの列を見てください。ここが落とし穴です。受け取った100円と、分配後の基準価額9,700円を足すと9,800円です。分配の前と1円も変わっていません。
個別元本は9,900円に下がります。次の決算からは、この9,900円が「買った値段」として使われます。
普通分配金は配当所得として扱われ、公募の投資信託なら、国税庁の説明では20.315%(所得税と復興特別所得税で15.315%、地方税5%)が差し引かれます。元本払戻金に税金がかからないのは、所得税法9条で「元本の払戻しに相当する部分」が非課税とされているからです。優遇というより、そもそももうけではない、ということです。
このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。この節で使うのは1つ目、「その数字の出典は?」です。
Cさんの投資信託で、毎月100円の分配が1年続いたとします。1年で1,200円。9,800円で割ると12.2%です。「分配金利回り12%」と書くこともできそうです。
では、この12.2%は何を割った数字か。分子は払ったお金で、稼いだお金ではありません。
極端な前提で試します。運用の損益がゼロ、手数料もゼロで、毎月100円ずつ分配したとします。1年後の基準価額は9,800円から1,200円下がって8,600円。受け取った1,200円と足すと9,800円で、スタート地点と同じです。「利回り12.2%」なのに、資産は1円も増えていません。そして12回とも分配前の基準価額が個別元本を下回っているので、1,200円は全部が元本払戻金で、個別元本は8,800円まで下がります。
日本証券業協会の資料にも、分配金の水準がその期間の投資信託の収益率を示すとは限らない、という趣旨がはっきり書かれています。資産運用業協会も、分配金が高くても、トータルリターン(分配金と基準価額の上げ下げを全部足した成績)が高いとは限らないと説明しています。
割合の数字を見たら、分子が「稼いだお金」なのか「払ったお金」なのかを確かめる。出典を聞くというのは、そういうことです。地味ですが効きます。
新しいNISAにも、この話はつながっています。
つみたて投資枠で買える投資信託の要件は、租税特別措置法施行令25条の13に書かれています。その1つが、収益の分配を「一月以下の期間ごとに行わないこととされて」いること。毎月分配するものは、つみたて投資枠の対象になりません。
成長投資枠も、金融庁の説明では信託期間20年未満のものや毎月分配型の投資信託などが除外されています。
枠の使い方は新NISAで売ったら枠は復活するかで計算しました。持っている間ずっと引かれる手数料の差は信託報酬0.1%と1%の20年の差で見ています。
分配金の額より先に、私なら個別元本と今の基準価額を並べて見ます。基準価額のほうが下なら、次の分配金は払い戻しになる。受け取る前から分かることです。電卓もいりません。
次に、分配金のお知らせの内訳を確かめます。元本払戻金が毎回続いているなら、私は家計簿でそれを「毎月の取り崩し」と呼び直します。呼び方を変えるだけで、判断はだいぶ変わるはずです。
成績を見るときは、受け取った分配金の合計と、基準価額の上げ下げを足します。分配金利回りの数字は、その足し算が済むまで横に置いておきます。
次にやることを1つ挙げるなら、証券会社の保有明細を開いて、個別元本と今の基準価額を2つ並べてみてください。どちらが上かを見るところまでが今日の分です。
最後に受け取った分配金のうち、利益だった分はいくらでしたか?
投資信託の分配金のうち、自分が買った値段(個別元本)を下回る部分から出たものです。自分のお金の一部が戻ってきただけなので、所得税はかかりません。受け取ると、その額だけ個別元本が下がります。
分配金は投資信託の財産から払われるので、分配した額だけ基準価額が下がります。1万口あたり100円の分配なら、基準価額も100円下がります。
つみたて投資枠では買えません。租税特別措置法施行令で、収益の分配を1か月以下の期間ごとに行わないことが要件とされています。成長投資枠も、金融庁の説明では毎月分配型の投資信託が除外されています。