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年金・老後公開 2026-09-30 ・ 更新 2026-09-30

年金の繰下げは何歳まで生きれば得?損益分岐を月単位で計算

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年金繰下げの損益分岐

「年金は繰り下げるほど得」という話をよく見かけます。70歳まで待てば42%増え、その増え方は一生続きます。では、65歳から受け取った人に累計で追いつくのはいつか。月単位で計算すると、額面では81歳11か月でした。75歳まで待つなら86歳11か月です。思ったより先です。ただしこれは税金も保険料も引く前の数字で、手取りで比べると、並ぶ年齢はもう少し後ろにずれます。

書いている私は、相場のロジックを100以上検証してきたシステムエンジニアです。年金の専門家ではありません。数字は日本年金機構と厚生労働省の原文を開いて確かめたものと、前提を書いた自分の計算だけにしています。繰り下げをすすめる記事でも、止める記事でもありません。

先に1分チェック

  1. 生まれたのは昭和27年4月2日より後ですか。それより前なら、繰り下げられるのは70歳までです
  2. 65歳の時点で、年下の配偶者か18歳の年度末までの子がいますか。いるなら「加給年金」の節を先に読んでください
  3. 65歳から70歳までの生活費を、年金なしで払えますか。繰り下げの話は、ここが「はい」の人のものです

増え方は1か月0.7%。75歳まで待つと84%

日本年金機構の説明では、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、66歳から75歳までの間に繰り下げて受け取れます。増える割合は、65歳に達した月から、繰り下げを申し出た月の前月までの月数×0.7%です。70歳なら60か月で42%。5年です。75歳なら120か月で84%が上限です。

75歳まで繰り下げられるのは、昭和27年4月2日以後に生まれた人です。それより前に生まれた人(または平成29年3月31日以前に年金を受け取る権利ができた人)は、上限が70歳、増え方も最大42%までです。

逆に、60歳から65歳になるまでの間に早く受け取る「繰上げ」もあります。こちらは1か月0.4%ずつ減り、60歳で最大24%減です。昭和37年4月1日以前に生まれた人は1か月0.5%、最大30%減。繰上げは、あとから取り消せません。一度きりです。

増えた割合も減った割合も、一生変わりません。基礎年金と厚生年金は別々に繰り下げられる、とも原文にあります。

仮の人で計算:受け取り始めてから11年11か月で並ぶ

仮の人で数字にします。65歳から受け取ると年金が年200万円の人です。税金と社会保険料は考えず、額面で比べます。ここは大事な前提なので、あとで戻ります。70歳まで繰り下げると年284万円、75歳までなら年368万円です。

計算は Python で月単位にしました。年単位だと粗すぎるからです。65歳になった月を0か月目として、毎月「年額÷12」を足していき、累計が65歳から受け取った人に追いつく月を探しています。

比べる2つ年額(額面)累計が並ぶ年齢
65歳から と 70歳から200万円 → 284万円81歳11か月
65歳から と 75歳から200万円 → 368万円86歳11か月
70歳から と 75歳から284万円 → 368万円91歳11か月

筆者の計算。増額率は昭和27年4月2日以後生まれの人の率(1か月0.7%)。実際の支払いは2か月ごとの後払いで、受け取り始めは申し出た月の翌月分からですが、ここでは月ごとに受け取ると単純化しています。在職中の支給停止、加給年金、税・保険料は入れていません

計算して気づいたことが1つあります。70歳から受け取っても75歳から受け取っても、受け取り始めてから143か月(11年11か月)で並ぶんです。1か月あたり0.7%増えるので、1÷0.007でおよそ143か月。何か月待っても、取り返すのにかかる期間は同じ。約12年です。覚えやすい数字です。

年金額が200万円でも100万円でも、額面の並ぶ年齢は変わりません。割合の話だからです。意外でした。

その先の累計も並べておきます。

その歳になった時点の累計65歳から70歳から75歳から
80歳3,000万円2,840万円1,840万円
85歳4,000万円4,260万円3,680万円
90歳5,000万円5,680万円5,520万円
95歳6,000万円7,100万円7,360万円

筆者の計算。仮の人(65歳からなら年200万円)の額面の累計で、万円未満を四捨五入。実際の年金額は年度ごとに改定されますが、ここでは一定としています

参考までに、厚生労働省の令和7年簡易生命表では、65歳の人の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。65を足すと、男性84.68歳、女性89.52歳。平均の話なので、自分が何歳まで生きるかを教えてくれる数字ではありません。あくまで目安です。

手取りで比べると、並ぶ年齢は後ろにずれる

ここまでは額面です。日本年金機構の繰下げのページにも、繰り下げると年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金に「影響する場合があります」と書いてあります。

仕組みはこうです。年金は所得税と住民税の対象です(雑所得=給料や事業以外の所得の区分)。国民健康保険料や介護保険料も、所得をもとに決まります。年金が増えると、こうした負担も一緒に増えやすい。ここが落とし穴です。額面で42%増えても、手取りの増え方は42%より小さくなりやすいわけです。

手取りの増え方が小さいほど、追いつくのは遅れます。つまり手取りで比べた損益分岐は、81歳11か月より後ろになりえます。

どれだけ後ろになるか。ここでは計算しません。住民税や国民健康保険料の計算は住んでいる市区町村で違い、ほかの所得や家族の状況でも変わるからです。税金の個別の判断は、税理士や住んでいる市区町村の窓口で確かめてください。

「繰り下げれば42%増」を質問2で読むと、損する場合が5つ出てくる

このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。2つ目は「自分が損する場合は書いてある?」です。

「繰り下げれば年金が42%増える」は正しい説明です。ただ、損する側の話が抜けやすい。そこを見ます。日本年金機構の原文から拾うと、次のような場面がありました。

もう1つ、覚えておくと安心な決まりもあります。繰り下げるつもりで待っていたけれど、途中でやめて65歳からの分をさかのぼって受け取ることもできます。70歳を過ぎてからさかのぼる場合は、請求の5年前に繰り下げを申し出たとみなして増額した額で受け取る特例があります。ただし80歳以後の請求は対象外で、過去分をまとめて受け取ると、さかのぼって税金や保険料に響くことがあります。

この計算が当てはまらない人

私ならこうする

書き手のアイコン書き手

私なら、最初に「65歳から70歳までの5年間、何で暮らすか」を先に確かめます。年200万円の人が70歳まで待つと、その間に受け取らない年金は1,000万円です。この穴を貯金で埋めるなら、老後の資金計画そのものが変わります。小さな話ではありません。老後2000万円の前提を計算し直したときと同じで、月いくら足りないかの前提から見ます。

次に、ねんきん定期便で加給年金の対象になりそうかを見ます。対象なら、年40万円を超える上乗せを何年分あきらめることになるかを先に数えます。基礎年金と厚生年金は別々に繰り下げられるので、どう組み合わせるとどうなるかは年金事務所で聞きます。

「何歳まで生きるか」で決める人は多いと思います。でも、それは誰にも当てられません。81歳11か月という数字は、長生きしたら取り返せる目安として使い、それより先に早く亡くなった場合と、待つ間の生活費を確かめる。私はこの順番で考えます。迷ったら、ここに戻ります。

穴は5年分です。これを埋める手段として、自分で積み立てる年金(iDeCo)を考える人もいると思います。入れられる上限の話は、iDeCoの掛金の上限で確かめました。

この記事でわからないこと

次にやることを1つ挙げるなら、ねんきん定期便の「65歳から受け取れる見込み額」を探して、1.42倍と1.84倍を電卓で出してみてください。その差額と、待つ間に受け取らない額を並べるところまでが今日の分です。

65歳から70歳までの5年間、年金なしで暮らせそうですか?

日本年金機構と厚生労働省の公開情報をもとに、制度の一般的な仕組みを説明したものです(2026年9月30日に公式で確認)。個別の年金の受け取り方や税金の助言ではありません。計算例は仮の人の前提を置いたもので、実際の受取額を示すものではありません。

よくある質問

年金を繰り下げると何歳で元が取れますか

受け取り始めてから約11年11か月で、65歳から受け取った場合と額面の累計が並びます(1か月0.7%増のため、筆者の月単位の計算)。70歳からなら81歳11か月、75歳からなら86歳11か月です。税金や保険料を引いた手取りで比べると、並ぶ年齢は後ろにずれることがあります。

年金は何歳まで繰り下げられますか

昭和27年4月2日以後に生まれた人は75歳までで、増え方は最大84%です。昭和27年4月1日以前に生まれた人(または平成29年3月31日以前に受給権が発生した人)は70歳まで、最大42%です(日本年金機構)。

繰り下げ中に加給年金はもらえますか

日本年金機構の説明では、繰り下げを待っている期間中は加給年金額や振替加算を受け取れず、繰り下げても加給年金額は増えません。