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年0.1%と年1%。差は0.9%です。数字だけ見ると、どちらでもよさそうに見えます。ところが月3万円を20年積み立てる計算をすると、20年後の差は約100万円になりました。元本720万円の約14%です。0.9%の差が14%まで広がる理由は、信託報酬の引かれ方にあります。
信託報酬は、投資信託を持っている間ずっと引かれる手数料です。金融庁の資料の言い方だと「保有額に応じて日々支払う費用」。自分で払う感覚はありません。ファンドのお金から毎日少しずつ引かれ、その後の値段(基準価額)に最初から反映されています。
ここで見落としやすいのが「保有額に応じて」の部分です。引かれるのは、自分が積み立てた元本に対してではなく、その日の残高に対してです。積立を続けると残高は年々大きくなります。同じ1%でも、1年目の残高約36万円にかかる1%と、19年目の残高約900万円にかかる1%では、引かれる金額が20倍以上違います。
仮の人で計算します。毎月3万円を20年(240か月)積み立てる人です。元本は720万円。
利回りは、手数料を引く前で年4%と置きました。これは計算のための仮定です。将来この利回りになるという意味ではありませんし、元本割れする年もあります。そこから信託報酬を引いた年3.9%と年3.0%で、毎月複利で増やしました。
| 信託報酬 年0.1% | 信託報酬 年1% | |
|---|---|---|
| 引いた後の年利回り | 3.9% | 3.0% |
| 20年後の残高(月3万円の積立) | 10,832,376円 | 9,829,817円 |
| 20年で引かれた信託報酬(概算) | 約9.5万円 | 約89万円 |
| 一括100万円を20年 | 2,149,369円 | 1,806,111円 |
積立の差は1,002,559円。一括100万円でも、差は343,258円でした。
表の3行目も見てください。引かれた信託報酬の差は約79万円(約89万円−約9.5万円)で、残高の差の約100万円より小さい。残りの約21万円は、引かれたお金が手元に残っていれば、そこからさらに増えていたはずの分です。
同じ計算で、途中の年の差を並べます。
| 積み立てた年数 | 元本 | 0.1%と1%の残高の差 |
|---|---|---|
| 5年 | 180万円 | 44,645円 |
| 10年 | 360万円 | 198,804円 |
| 15年 | 540万円 | 501,509円 |
| 20年 | 720万円 | 1,002,559円 |
10年から20年にかけて、差は5倍になっています。年数は2倍なのに、です。
理由は2つ重なっています。1つは、さっきの「残高にかかる」話です。残高が大きい後半ほど、引かれる額も大きい。もう1つは複利です。引かれたお金は、その後の運用に回りません。1年目に引かれた分は19年間、増えるはずだった機会ごと消えます。
だから「年0.9%の差なら、20年で18%くらいかな」という足し算の感覚は外れます。積立なら後半の残高が大きいので効き方が違いますし、一括なら掛け算で効きます。一括100万円の例では、1%の側は0.1%の側より約16%少なくなりました。
このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。この記事で使うのは1つ目、「その数字の出典は?」です。
「このファンドは低コスト」と言われたら、その数字がどこに書いてあるかを見ます。業界団体の資産運用業協会(2026年4月に投資信託協会が合併してできた団体)の説明では、費用は交付目論見書(買う前に渡される説明書)の「手続・手数料等」に書いてあります。ここに載っているのは次のような費用です。
「その他の費用」は、年何%と先には書けません。そこで見るのが総経費率です。運用中に実際にかかった費用を年率にしたもので、交付運用報告書(決算ごとに届く運用の報告)に載っています。2022年に改正された業界団体のルールで、直近の総経費率を交付目論見書にも「参考情報」として載せることになりました。場所は「手続・手数料等」の最後です。ネットでは「実質コスト」と呼ばれることもあります。
ただし、総経費率にも入らない費用があります。株の売買委託手数料と有価証券取引税、募集手数料は除く決まりです。売買の手数料まで見たいときは、運用報告書の「1万口当たりの費用明細」を開きます。
NISAのつみたて投資枠で買える投資信託には、法令で決まった要件があります。信託報酬(税抜)の上限は次のとおりです。
2026年9月24日時点で、対象は371本。指数に連動するものの信託報酬の平均は、国内が0.27%、内外・海外が0.34%と金融庁の資料にあります。
ということは、この記事の「1%」は、つみたて投資枠で指数に連動する商品を選ぶ限り、出てこない数字です。1%前後の信託報酬に出会いやすいのは、成長投資枠や、NISAの外で買う投資信託のほうです。NISAの2つの枠の違いはNISAの枠が復活する仕組みで書きました。
私なら、まず交付目論見書の「手続・手数料等」を開いて、信託報酬と、その下の総経費率を先に確かめます。2つの数字が大きく違えば、信託報酬以外の費用が多いファンドです。
信託報酬が高いファンドを見かけたら、「その差で何を買っているのか」を考えます。高い手数料の分だけ運用で取り返せるなら、差は埋まります。ただ、取り返せるかどうかは事前にはわかりません。一方、手数料は毎年確実に引かれます。確実に引かれる側の数字を先に確かめておく、というのが私の順番です。
もう1つ、利回り4%という前提自体も疑ってかかります。20年後の老後資金を一本の利回りで計算してよいのかは、老後2000万円の前提を確かめた記事で書きました。
利回りの数字で、もう1つ疑っておきたいのが「分配金利回り」です。運用の利回りと同じように見えて、中身は元本の払い戻しのこともあります。毎月分配型の分配金が利益か払い戻しかを仮の人で計算しました。
次にやることを1つ挙げるなら、いま持っている投資信託の名前で交付目論見書を探し、「手続・手数料等」のページを開いてください。信託報酬と総経費率、2つの数字をメモするところまでが今日の分です。
あなたの投資信託の信託報酬は、年何%でしたか?
月3万円を20年積み立て、手数料を引く前の年利回りを4%と仮定した筆者の計算では、0.1%が10,832,376円、1%が9,829,817円で、差は1,002,559円でした。利回りは仮定で、将来を約束するものではありません。
交付目論見書の「手続・手数料等」に、購入時手数料・運用管理費用(信託報酬)・信託財産留保額・その他の費用が書いてあります。運用中に実際にかかった費用は、交付運用報告書の「1万口当たりの費用明細」と総経費率で確かめられます。
あります。金融庁の資料では、指定された指数に連動する投資信託は信託報酬(税抜)が国内資産0.5%以下・海外資産0.75%以下、それ以外は国内1%以下・海外1.5%以下で、販売手数料は0が要件です。