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年金・老後公開 2026-10-11 ・ 更新 2026-10-11

年金の繰上げと失業保険はどっちが先?厚生年金は全額止まる

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年金の繰上げと失業保険の順番

繰上げで受け取り始めた老齢厚生年金は、ハローワークで求職の申込みをすると全額止まります。失業保険を1日も受け取っていない月でも、いったん止まる。止まらないのは老齢基礎年金だけです。

60歳で退職して、年金を繰り上げて、失業保険ももらう。両方を同時に始めると、24%減らした厚生年金が最初の数か月まるごと出ません。減額だけが残ります。

書いている私は、相場のロジックを100以上検証してきたシステムエンジニアです。年金の専門家ではないので、日本年金機構とハローワークの原文を開いて確かめた内容と、前提を書いた自分の計算だけを載せています。

先に1分チェック

  1. 退職するのは65歳の誕生日より前ですか。65歳からの年金は、この調整の対象外です
  2. 65歳より前に、老齢厚生年金を受け取りますか。繰上げをする人と、特別支給の老齢厚生年金がある人が当てはまります
  3. 退職したあと、すぐに次の仕事を探しますか。しばらく休むつもりの人は、失業保険そのものが出ません

3つとも「はい」の人が、この記事の相手です。1つ目が「いいえ」なら、下の「65歳をまたぐと話が変わる」だけ読めば足ります。

止まるのは老齢厚生年金。求職の申込みの翌月から

失業保険の正式な名前は、雇用保険の基本手当です。日本年金機構は、65歳になるまでの老齢年金と基本手当は「同時には受けられません」と書いています。止まる年金として挙げているのは、特別支給の老齢厚生年金と、繰上げ支給の老齢厚生年金です。

止まり方には、読み落としやすい点が3つありました。

老齢基礎年金は止まりません。繰上げのページに「老齢基礎年金は支給停止されません」とあります。ただし繰上げは、原則として基礎年金と厚生年金を同時に請求する決まりです。厚生年金だけ後回しにはできません。ここが順番を考える理由になります。

止まる月数は、あとで精算される。150日なら5か月

受け取っていない月まで止まるのは、さすがに取りすぎです。そのため、あとから月数を合わせる「事後精算」があります。日本年金機構のパンフレットの式はこうです。

戻ってくる月数=止まっていた月数−(基本手当を受けた日数÷30) 割り切れないときは1か月に切り上げ

パンフレットの例は、給付制限2か月・所定給付日数150日の人でした。止まっていたのは7か月。150日÷30=5か月を引いて、2か月分がさかのぼって支払われます。差し引きで止まるのは5か月です。

受けた日数が121日でも、切り上げで5か月になります。1日だけ受けても1か月。端数は受け取る側に不利に丸まります。

戻ってくる分の支払いは遅い。原文では、受給期間が過ぎたあとの支払い開始は「3カ月程度後」です。止まっている間の生活費は、基本手当と基礎年金でまかなう形になります。

日数は辞め方と加入期間で変わります。定年や自己都合で辞めた人は、雇用保険に20年以上入っていて150日、10年以上20年未満で120日です。自己都合の給付制限がいまは原則1か月になっている話は、失業保険は自己都合でいつから出るかに書きました。

仮の人で計算:先に繰り上げると、厚生年金45.6万円が出ない

では、同時に始めた場合と、基本手当を受け終えてから繰り上げた場合で、何が違うのか。仮の人を置きます。

比べる点A 退職と同時に繰上げB 受け終えてから繰上げ
繰上げの時期60歳0か月60歳6か月
減額率24.0%21.6%
年金の月額(厚生+基礎)140,600円145,040円
最初の6か月の年金387,600円0円
止まって出ない厚生年金456,000円なし

筆者の計算。額面で、税・社会保険料・年金額の改定は入れていない。Aは厚生年金が5か月止まり、最初の6か月に出るのは基礎年金6か月分と厚生年金1か月分と置いた。基本手当はAもBも同じ額なので表に入れていない

Aは、最初の半年に年金が38.76万円入ります。ほとんどが基礎年金です。厚生年金は月91,200円に減らしたのに、5か月分の45.6万円は出ません。

Bは、最初の半年は年金ゼロ。基本手当だけで暮らします。そのかわり繰上げが6か月遅くなるので、減額率が2.4ポイント小さくなり、月4,440円多い年金が一生続きます。

BがAに追いつくのは67歳10か月でした。387,600円÷4,440円で、88か月目です。

ふつうの繰上げは、遅らせた人が追いつくまで20年10か月かかります(年金の繰上げ受給のデメリットで計算しました)。今回は7年4か月。短い理由は単純で、Aは繰り上げても厚生年金が止まっていて、早く始めた得が基礎年金の分しか無いからです。

質問2で読む:損する場合は、どこに書いてあったか

このブログでは、お金の話に3つの質問を当てています。今回は2つ目、「自分が損する場合は書いてある?」です。

書いてありました。ただ、場所が分かれています。繰上げのページでは、注意点13項目のうちの1行。基本手当との調整の詳しい中身は、別のページとパンフレットです。ハローワークの基本手当のページには、年金の話が出てきません。

年金の窓口では年金の話、ハローワークでは雇用保険の話。両方にまたがる損は、自分でつなげないと見えません。私なら、繰上げの請求書を出す前に、ハローワークの予定を先に紙に書きます。

65歳をまたぐと話が変わる

この調整は「65歳になるまで」の年金の話です。65歳からの老齢年金は対象に入っていません。

一方で、雇用保険の側も65歳で変わります。65歳以上で辞めた人に出るのは基本手当でなく高年齢求職者給付金で、基本手当日額の50日分(加入1年未満は30日分)の一時金です。65歳より前に辞めた人の150日とは、長さが違います。

辞めたとき雇用保険から出るもの65歳前の厚生年金
65歳より前基本手当 90〜150日(定年・自己都合)受けている間は全額止まる
65歳以上高年齢求職者給付金 30日分か50日分調整の対象外

出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「基本手当の所定給付日数」、日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」(2026年10月11日確認)

60〜64歳の基本手当日額の上限は7,830円です(令和8年8月1日現在)。150日なら最大で約117万円。日額は退職前6か月の賃金で決まるので、自分の額はハローワークで出してもらう数字です。

この計算が当てはまらない人・向かない人

私ならこうする

書き手のアイコン書き手

私なら、まず3つの数字を並べます。基本手当の日額と日数、繰り上げたあとの厚生年金の月額、基礎年金の月額。日額を30倍した額が厚生年金の月額より大きいなら、基本手当を受ける月は、年金が止まっても受け取る額は増えます。仮の人の厚生年金は1日あたり3,040円でした。

次に、繰上げを基本手当のあとに回せるかを見ます。回せるなら回す。止まると分かっている年金のために、一生続く減額率を先に確定させたくないからです。繰上げは取り消せません。

回せないなら、無理はしない。その場合も、求職の申込みと繰上げ請求の日付を年金事務所で先に確かめます。どの月から止まるかが、申込みの月で1か月ずれるためです。

この記事でわからないこと

次にやることを1つ。ねんきんネットで65歳からの老齢厚生年金の見込額を出し、30で割ってください。それが、止まる年金の1日あたりの額です。

その額と、あなたの基本手当の日額。大きいのはどちらですか?

日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」「失業給付・高年齢雇用継続給付を受けるとき」(どちらも更新日 2024年9月30日)、パンフレット「雇用保険の給付を受けると年金が止まります!」、「年金の繰上げ受給」、ハローワークインターネットサービス「基本手当について」「基本手当の所定給付日数」をもとに、制度の一般的な仕組みを説明したものです(2026年10月11日確認)。計算は仮の人の額面で、あなたの年金額や受け取り方を示すものではありません。個別の相談は年金事務所とハローワークへ。

よくある質問

年金を繰り上げると、失業保険は受け取れなくなりますか

失業保険(基本手当)は受け取れます。止まるのは年金の側で、65歳になるまでの老齢厚生年金が、求職の申込みをした月の翌月から全額支給停止になります。老齢基礎年金は止まりません(日本年金機構「年金と雇用保険の失業給付との調整」「年金の繰上げ受給」、2026年10月11日確認)。

失業保険を受けると、年金は何か月止まりますか

事後精算のあとで止まる月数は、基本手当を受けた日数を30で割った数(端数は切り上げ)です。150日なら5か月、90日なら3か月。受けなかった月の分は、受給期間が過ぎたあとにさかのぼって支払われます(日本年金機構のパンフレット、2026年10月11日確認)。

65歳を過ぎてから退職した場合も年金は止まりますか

日本年金機構が調整の対象にしているのは「65歳になるまでの老齢年金」です。65歳以上で退職した人に雇用保険から出るのは高年齢求職者給付金で、基本手当日額の30日分か50日分の一時金です(ハローワークインターネットサービス、2026年10月11日確認)。

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